The Idiot, the Curse, and the Magic Academy

Chapter 102



家に帰ると、部屋着に着替え、1階に降りる。

そして、リビングに入ると、父さんが一人でパソコンを見ていた。

「あれ? 母さんは?」

「買い物に行ったぞ」

夕食の買い出しか。

「父さん、ちょっといい?」

そう聞きながら父さんに近づく。

「何だ?」

父さんが顔を上げた。

「白川って知ってる?」

「白川……あー、白川ユキさんと会ったか?」

やっぱり知ってるっぽい。

「そうそう。同じ学年のAクラスにいた。今日、町の外で会ったんだよ」

「そうか……ユキさんは昨年、白川家の当主の座についた人だな」

つまり中3で当主か。

すごいな。

「親父さんが色々失敗したとは聞いたけど」

「かなりな……ユキさんはこれから大変だろう」

かなりか……

「バイトでトカゲを狩ってたね」

「そうか……一応、気にかけてやれ。白川さんのところとは交流があるわけではないが、同じ日本の魔法使いの家だからな」

「ロナルドっていう従兄も一緒だったし、大丈夫だとは思うけどね」

多分、強いし。

「ロナルド……それは知らなかった。白川も外国と繋がったのか」

「何かあるの? ウチもフランスの人と繋がってるけど」

もちろん、ラ・フォルジュの家ね。

「あ、いや、別に他意はない。日本は元々、外国と繋がりが薄かったせいで魔法使いの数が減少傾向にあったんだ。魔法使いの子が魔法使いになるとは限らないからな」

確かにそれはわかる。

実際、ラ・フォルジュの家にも長瀬の家にも魔法使いじゃない人はいる。

「外国との繋がりが関係するの?」

「単純に数の話だ。両親が魔法使いだったら高確率で魔法使いが生まれてくる。片方だけだったら五分五分って感じなんだが、日本だけで済まそうとすると絶対数が足りないんだ。ましてや、日本は隠している魔法使いの家が多いからな。横の繋がりもほぼない。そうなると、徐々に魔法使いの血が薄くなり、ゆるやかに衰退していく」

なんか寂しい話だな。

「ウチもそうだったの?」

「まあな。そういう流れが変わったのは戦後、アストラルに日本人も行きだしてからだ」

そういや魔法代理戦争とやらに日本は関係なかったと言ってたな。

それまではアストラルに行ってなかったんだ。

「それで他国の家と繋がり始めたの?」

「だな。仕事や学校なんかで出会いが増えたわけだ。ウチもそう。学園で母さんと出会い、そのまま結婚した。白川さんのところがどんな感じかは知らないが、似たようなものだろう」

へー……

「白川の家ってどういう魔法を使うかわかる?」

「確か魔法で物を具現化するのが得意な家だった気がする」

物を具現化?

「何それ?」

「魔力で一時的な剣や盾を作ったりする魔法だ」

へー、すごい気もするが、よーわからん。

「変な魔法」

「昔の魔法だ。今は別の魔法を使うかもしれんな。どこの家も常に新しい魔法を研究しているし」

「ウチも?」

「長瀬もラ・フォルジュもしてると思うぞ。俺と母さんはもう魔法使いじゃないから知らないがな」

結婚した際に魔法使いを辞めたんだったな。

「そっかー。よくわからないってことはわかったわ」

「白川さんが気になるのか?」

「いや、フランクがね。今月末に魔法大会があるんだよ」

「魔法大会か。懐かしいな」

やっぱり父さんの代にもあったようだ。

「父さんと母さんは出たの?」

「俺は出たが、母さんが出るわけないな。生粋のお嬢様だし」

まあ、母さんは戦いが嫌いな人だしな。

「優勝した?」

「最初の1回は優勝したな。あとは普通に負けた。1回優勝すると、皆が対策を立ててくるんだよ。俺も戦闘タイプに特化した魔法使いだったが、そういうのは対策されやすい」

まあ、そうだわな。

すごいのはそれでも全部優勝したらしいクロエだ。

「そっかー」

「お前は出るのか?」

「微妙……」

出てもなー……

「――あー、良いお湯だった。あれ? お兄ちゃんも帰ってたの?」

リビングに肩にタオルをかけたトウコが入ってきた。

どうやらお風呂に入っていたらしい。

「さっき帰ってきた」

「へー……お風呂空いたよ」

「後で入る。お前、魔法大会はどうするんだ?」

「出ないね。会長が出ないなら出る意味がない。出るならリベンジマッチなんだけど」

やめーや。

「シャルが可哀想だろ」

「いや、負けたのは私なんだけど……しかも、敗因は実の兄の裏切り」

………………。

「鳥は狩れたか?」

「話を逸らすの下手か! 狩れたよ! 昼食は焼鳥だった!」

いいなー……

美味しそう。

「楽しそうだな」

「楽しかったね。鳥を捌くイルメラを見たノエルが若干、青ざめていたけど」

可哀想に……

「売れたか?」

「そこそこね。なんか筋肉のお爺ちゃんに売ってた」

クラウスだな。

「よかったな。不毛な熊探しよりかはいいだろ」

「まあねー。お兄ちゃんは? トカゲいた?」

「トカゲは見てないな。ワニはいた」

「は? ワニ?」

こいつ、なんで言わないんだと思っていたが、知らなかったのかよ。

「川にワニがいたわ」

「へー……こわっ! 噛むやつじゃん。ぐしゃってするやつじゃん」

本当に語彙力がない奴だわ。

「瞬殺してやったがな」

「へー、ワニって美味しいのかな?」

「知らね。多分、鳥の方が美味いだろ」

鳥肉、美味しいもん。

「お前達、あまり危ないことをするなよ。母さんが心配する」

父さんが忠告してきた。

「大丈夫、大丈夫。危ないことなんてない」

「そうそう。私の空を飛ぶ姿を見てほしいね。蝶のよう」

蛾だろ。

「飛んでみ?」

「よーし、見てな……せーい」

トウコが浮きだした。

そして、そのまま上がっていく。

「すごくない? まるでモンシロ――いたっ!」

蝶々さんが天井に頭をぶつけて落ちてきた。

こいつ、本当にバカだわ。

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